この記事でわかること |
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今回はバーバリーがどのようにしてデジタルマーケティングでブランドを再生させたのかについて解説します。
この記事を読めば老舗ブランドが若年層を熱狂的ファンに変えた秘訣と、そこから学べる中小企業にも応用可能なポイントがわかるので、ぜひ最後まで読んで学んでください。
バーバリーが復活した理由
バーバリーは一時ブランド価値が低迷していたもののデジタル戦略を軸としたマーケティングの刷新により、劇的な復活を遂げました。
その背景には、従来の高級ブランドの枠を超えた柔軟な取り組みがあります。
デジタルマーケティングへの先進的な取り組み
バーバリーの復活を語る上で、デジタルマーケティングの先進的な取り組みは欠かせません。
2006年という比較的早い段階で、バーバリーは「デジタル領域への進出」を公式に宣言しました。
当時のファッション業界においてこのような宣言を行う企業はほとんどなく、先駆者としての姿勢が際立っていましたが、その時点では社内に豊富なデジタル知識があったわけではなく、むしろ「ゼロスタート」とも言える状況でした。
それでも同社は未来を見据えた大胆な意思決定を行い、デジタルネイティブ世代との接点を積極的に築くために、ブログやFacebook、Twitter、Snapchat(スナップチャット)、Periscope(ペリスコープ)といった当時の最新ソーシャルメディアを積極活用したんです。
ここで注目すべきは、単なる流行の模倣ではなく、ユーザーとの接点や対話を重視する「開かれたブランド戦略」を軸に展開された点です。
ユーザー参加型のキャンペーンやリアルタイムでの情報発信により、バーバリーは新しいブランド体験を提供する企業として再評価されていきました。
「ラグジュアリー=閉鎖的」の常識を打ち破った
バーバリーの大きな転機となったのは、「高級ブランド=特別な存在」という既成概念をあえて壊しにかかったことです。
ラグジュアリーブランドといえば、限られた層にのみ語りかけるような“閉じた世界観”が一般的でした。
しかしバーバリーは、そこに風穴を開けます。
「ユーザーに対して開かれたブランドになる」という明確なビジョンのもと、情報を積極的に公開し、ユーザーとブランドの間にあった壁を取り払っていきました。
具体的には、SNSを通じてブランドの裏側を見せたり、一般ユーザーによるコンテンツ(UGC)を公式に取り上げたりと、参加型のブランド戦略を強化しています。
この姿勢は、若年層やデジタルネイティブ世代に強く支持されることとなり、結果として新たなファン層の獲得とブランドの再活性化に直結しました。
さらに、バーバリーはこうした変革を一時的なキャンペーンで終わらせず、企業文化そのものに組み込むことで、ブランド価値の持続的な成長を実現していきます。
ユーザーとのつながりを積極的に取り入れる
バーバリーは、顧客との距離を縮める革新的なアプローチで、ブランド価値を保ちつつファン層を拡大しました。
その象徴が「ユーザーとのつながり」に重きを置いた戦略です。
ファッションショーの“壁”を取り払ったライブ体験
従来、ファッションショーといえば、業界関係者や著名人のみが参加できるクローズドなイベントでした。
選ばれた一部の人々が最先端のコレクションを堪能し、半年後にようやく一般消費者が手に取れるというサイクルは、長らく業界の常識でした。
しかしバーバリーは、この古い慣習を根底から覆します。
2010年春夏のコレクションで、バーバリーは大胆にもショーの様子を全世界へライブストリーミングで配信し、さらにFacebook上で世界中の視聴者がリアルタイムに感想を共有できる仕掛けを組み込みました。
これにより、視聴者はただの傍観者ではなく「ショーに参加している」という感覚を味わうことができました。
たとえば「アナ・ウィンターがいる!」といったリアルタイムのコメントが飛び交うことで、視聴者はまるでその場にいるかのような臨場感を感じ、親近感と興奮が高まります。
これは単なる配信ではなく、ユーザーとの「ライブな接続」を意識した、緻密に設計されたブランド体験でした。
こうした取り組みは、SNSを介した拡散性とも相性が良く、瞬く間にバーバリーの新しい試みに注目が集まりました。
「開かれたラグジュアリーブランド」という新たなポジションを確立するうえで、大きな転換点となった施策です。
購入までの待ち時間をなくし、特別感を演出
ライブ配信だけでは終わりません。
バーバリーはさらに、ショー直後からの「即時購入体験」を導入することで、消費者の行動心理に深く訴えかけました。
これまでは半年後まで店頭に並ばなかった新作アイテムを、ファッションショー終了と同時に予約注文できるようにしたのです。
この施策により、ユーザーは「今見たばかりのアイテムを誰よりも早く手にできる」という優越感と限定性を得られるようになりました。
特にデジタルネイティブ世代は、“即反応・即実行”のスピード感を重視する傾向が強く、この取り組みはそうしたユーザー心理を巧みに突いています。
さらに、注文者には商品が店頭販売よりも先に届くという特典もあり、「自分は特別な顧客だ」と感じさせる演出が施されています。
これは、バーバリーがブランドとしての高級感を失うどころか、むしろ顧客一人ひとりに“パーソナルな価値”を提供する形で、より強固なブランドロイヤルティを築いた証です。
こうした施策に対し、当初は「ラグジュアリーブランドとしての品格が損なわれるのでは?」という懸念もあったものの、結果としてバーバリーは売上を10%以上増加させ、ファンベースも大きく拡張することに成功しました。
顧客との“つながり”を主軸に置いたブランド戦略は、現代のマーケティングにおいていかに重要かを証明する好例と言えるでしょう。
SNSをうまく活用する
バーバリーは、SNSを単なる広報手段として使うのではなく、ユーザー参加型のブランド体験へと昇華させました。
顧客との共創を実現した取り組みが、ブランドの魅力と拡散力を高める原動力となったのです。
「Art of the Trench」で顧客が主役の世界観を構築
バーバリーのSNS戦略を語る上で欠かせないのが、「Art of the Trench」の取り組みです。
これは、ブランドの代名詞でもあるトレンチコートを着用している一般ユーザーの写真を集めて紹介する、ユーザー参加型のデジタルプラットフォームです。
投稿された写真はプロのモデルやインフルエンサーではなく、実際の顧客によるものなんです。
誰でも参加できる仕組みによって、ユーザーは「ブランドの一部になれる」という高揚感と共に、自然とバーバリーへのロイヤルティを高めていきました。
この仕掛けは、単なるファン投稿とは異なり、ブランドの世界観と一体化するように設計されています。
「バーバリーのトレンチコート」という明確な参加条件を設けることで、コンテンツに一貫性とブランド性を持たせつつ、参加するユーザーには“ちょっとした選ばれし者”のような気分を味わってもらう工夫がなされています。
ユーザーにとっては、投稿が採用されることでブランドに“認められた”という感覚を得られ、企業にとっては無料で質の高いUGC(ユーザー生成コンテンツ)が蓄積されていく、まさにWin-Winの関係です。
また、この取り組みにより、ブランドと顧客の関係性が「販売者と購入者」ではなく、「共に創る仲間」のようなフレンドリーな距離感に変化しました。
従来のラグジュアリーブランドでは見られなかった、開かれた姿勢と親しみやすさが、多くの支持を集める要因となったのです。
SNSの「拡散力」と「共感力」をブランド資産に変える
バーバリーは早くからInstagramやFacebookといったSNSに注目し、それを単なる情報発信の場としてではなく、「ブランド体験を拡張する場」として活用してきました。
特にInstagramでは、ユーザー自身が投稿した「バーバリートレンチを着た自分のスタイル」を通して、“自分だけのラグジュアリー”を発信できるようにしたのです。
これは、「他人に見てもらいたい」「共感してほしい」というSNSユーザーの根源的な欲求に見事に応えるものでした。
結果として、投稿された写真の多くが自然と「#Burberry」や関連タグで拡散され、ブランドは広告費をかけずに世界中にリーチできるようになりました。
しかもそのコンテンツは、広告クリエイティブよりもはるかに信頼されやすい“生活者のリアルな声”。
SNSが持つ“共感の力”をフルに活かしながら、バーバリーはブランドイメージを強化していきました。
さらに、SNS上でユーザー同士が互いの投稿にコメントし合ったり「いいね」を送り合うことで、ブランドを起点とした小さなコミュニティが多数生まれていきます。
これらの関係性は、数値では測りきれない“ブランドのファン基盤”として確実に蓄積されていきました。
結果としてバーバリーは、時代に取り残されかけていた老舗ブランドのイメージを一新し、「革新性」と「親しみやすさ」を併せ持つブランドとして、新たなポジションを確立するに至ったのです。
ビジョンが成功へと導く
変化の激しい市場でブランドが生き残るには、揺るがぬビジョンが必要です。
単なる目標ではなく、行動のすべてを方向づける「核」となる考えがあることで、過去の成功に縛られずに進化できます。
変革の起点は「自分たちは何者か」の問いだった
バーバリーは長年、「伝統的な英国ブランド」というイメージに支配されていました。
確かにそれは栄光の証でしたが、時代とともにその固定観念が重荷となっていたのも事実です。
若い層には「古臭い」「高級だが退屈」という印象を持たれ、ブランドの鮮度が落ちていました。
そんな停滞感に終止符を打ったのが、当時のCEOアンジェラ・アーレンツとチーフ・クリエイティブ・オフィサーのクリストファー・ベイリーです。
彼らはまず、「バーバリーとは何か」という問いを自らに投げかけました。そして出てきた答えが、「英国のクラフツマンシップと革新性の融合」だったのです。
単なる衣料品メーカーではなく、歴史とモダンを行き来するストーリーテリング。
それが新たに定義されたブランド像でした。この再定義があったからこそ、後の全ての施策が一貫性を持ち始めたのです。
そこから打ち出されたのが、デジタル施策への大胆な舵取りです。
伝統的なトレンチコートを着たモデルが、インスタグラムやライブストリーミングに登場するという、当時のラグジュアリーブランドでは異例の戦略でした。
だが、その奇抜さを可能にしたのは、明確なビジョンがあったからこそです。
顧客像の再構築が施策の精度を上げた
変革において、バーバリーは顧客像の見直しも徹底しました。
それまでは高年齢層や伝統志向の人々が主なターゲットでしたが、新たに描いたのは「伝統を尊重しながらも個性を表現したい若年層」。
具体的な取り組みの一つが、若手のアーティストやミュージシャンとのコラボレーションです。
エマ・ワトソンを起用したキャンペーンなどは、その象徴的な例と言えるでしょう。
伝統の象徴であったトレンチコートに、都会的でエッジの効いたスタイリングを施し、既存顧客を驚かせつつ新規層を取り込むことに成功しました。
当時、多くの業界人が「バーバリーがそんなことを?」と驚いたほどです。
しかし、内部ではブレない軸がありました。英国的な気品を捨てるのではなく、新たな形で再解釈しようという覚悟があったのです。
その結果、SNSでの拡散力が爆発的に高まり、若者からの支持を集めました。
ただ流行を追ったのではなく、あくまで顧客像に即した表現に落とし込んだからこそ、ブランドの価値がむしろ強化されたのです。
本質的な価値を再発見し進化させた
バーバリーの変革で特筆すべきは、過去を否定せずに「未来のために再解釈」した点です。
多くのブランドが陥るのは、過去の成功をそのまま守ろうとする姿勢です。
しかしバーバリーは、自社のアイコンであるトレンチコートを見直し、デザインはそのままに素材や演出を刷新しました。
その象徴が、ロンドン・ファッション・ウィークでの演出です。
クラシックなスタイルのモデルが、テクノロジーと融合した演出空間を歩く姿は、まさに「伝統と革新」の体現でした。
さらに、ランウェイ直後にオンラインで購入できる施策も導入し、「憧れ」から「即時体験」への導線を作ったのです。
この一連の流れは、単なるトリックではありません。
ブランドの本質を顧客の変化とともに見直し、再定義した成果でした。
古いままでは生き残れない。でも、過去を捨てる必要もない。
そのバランスを取るために必要だったのが、明確で力強いビジョンだったのです。
結果として、バーバリーはただの老舗ブランドではなく、「今を生きる人々に寄り添うラグジュアリー」として生まれ変わりました。
これは一部の天才だけが成し遂げた変化ではありません。
問い直し、定め直し、形にするという地道な積み重ねの果てに実現した進化なのです。
まとめ
今回の記事では、バーバリーがデジタルマーケティングでブランドを再生させた方法について解説しました。
バーバリーの成功事例から自社で適用できるものをぜひ取り組んでみてください。
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